リモートアクセスの導入を検討しているものの、接続方法や導入のメリットを理解しきれていないという方もいるでしょう。
リモートアクセスの接続方法にはいくつかの種類があります。自社に適した方法で導入すれば、テレワークの定着をはじめとするさまざまなメリットを得られますが、不適切なものを選んでしまうとセキュリティリスクが発生しかねません。
この記事では、リモートアクセスの概要を解説したうえで、リモートアクセスの接続方法5種や導入のメリット、注意点などを紹介していきます。
目次
リモートアクセスとは、手元のデバイスから離れた場所にあるコンピューターまたはシステムにアクセスし、遠隔操作で使用する仕組みを意味します。テレワーク人口の増加や、それに伴った情報漏洩リスク増大などの影響から、近年注目度が高まっています。
リモートアクセスを導入することで、社内で使用されるパソコンの遠隔操作や社外からのメールチェック・ファイル転送などが可能となるため、テレワークでも不便さを感じないでしょう。
テレワーク中に自宅のパソコンからアクセスできるだけでなく、外出時にタブレットやスマートフォンからアクセスできるのも大きなポイントです。
リモートアクセスにはさまざまな接続方式があり、それぞれ特徴が異なります。導入の際には、それぞれの接続方法の違いを理解したうえで、自社に適した接続方式を選びましょう。
以下、リモートアクセスの接続方式と仕組みについて詳しく解説します。
VPNは、インターネット上に構築した仮想のネットワークを用いて通信を行う仕組みです。データが暗号化されるため「盗聴」や「データ改ざん」などのリスクが低くなり、安全なリモートアクセスの環境を構築できます。
社内ネットワークで接続できるため、クラウドサービスにアクセスする場合でも社内と同じセキュリティレベルが適用される点がメリットです。セキュアな環境での通信が可能になりますが、VPNの構築方法によってはコストがかさむ可能性がある点は、考慮する必要があるでしょう。
また、社外の端末に社内のデータを保存する際には、デバイスのセキュリティ状況によって情報漏洩リスクが高くなるので注意が必要です。
■参考記事
VPN(仮想プライベートネットワーク)とは?仕組みや活用シーンを紹介
社外にある端末から社内のデバイスに接続し、そのデスクトップ環境を遠隔操作で利用する方法をリモートデスクトップ(RDS)と呼びます。
社外の端末を「クライアント」、社内の端末を「ホスト」と呼び、利用時の処理をホスト側で行う点に特徴があります。インターネット環境があれば、社内と同一の環境を構築できるほか、作業内容はホストに保存されるため、情報漏洩リスクも低いといえるでしょう。
ただし、インターネットの通信品質に影響を受けやすいのがデメリットで、通信が込み合ったり品質が不安定だったりする時間帯などでは、速度が低下しやすくなります。
仮想デスクトップ(VDI)は、サーバー上でOSやアプリケーションなどのデスクトップ環境を稼働させる仕組みのことを指します。
必要最低限の機能しか持たない端末にもオフィスのPC環境を反映でき、遠隔地であっても社内と同じ環境を構築できるのがメリットです。遠隔地の端末には利用時のデータが残らないため、セキュリティレベルが高いことも利点として挙げられます。
ただし、構築する環境によっては大幅なコストが発生する可能性があります。また、RDSと同じように、インターネットの通信品質に回線速度が影響を受けやすいことも念頭に置いておきましょう。
リモートアクセスサービスは、インターネット回線を用いて社内システムやPCなどにアクセスするクラウドサービスで、ユーザー数や内容の変動に合わせて柔軟に環境を構築することが可能です。
社内システムを大幅に変更する必要がないため、コストを抑えられる点が大きなメリットです。
ただし、契約するサービスによって利用範囲が定められているので、検討する際には料金プランと内容をしっかりと確認したうえで利用を検討しましょう。不特定多数のユーザーが利用する一般回線を用いるほか、使用端末にデータを保存できてしまうため、セキュリティリスクが生じる点にも注意が必要です。
プログラムやソフトウェアを連携し、機能を拡張することでリモートアクセスの環境を構築する方法を「API接続」といいます。複数のプログラムが一般公開されているため、自社で一から開発する必要がなく、導入時の設定が簡単でスムーズに導入できるのもメリットです。
サーバーやネットワークへの負荷が少ないことが特徴ですが、より便利に活用するためには、ある程度のプログラミング知識が求められます。
リモートアクセスを導入することによるメリットは、以下の4つです。
それぞれ見ていきましょう。
リモートアクセスを導入し、社外から社内のシステム、コンピューターへのアクセスが可能になることで、従業員がさまざまな場所で働けるようになります。
自宅で仕事をする場合でも、社内と同じ環境を構築できるため、わざわざ出社しなくても業務に支障がありません。その結果、通勤時間や外出時の移動時間も業務に充てられるため、作業の効率化や生産性の向上に役立つでしょう。
また、テレワークを推進することで、「従業員のワークライフバランスの向上」「早期退職率の低下」「優秀な人材の確保」といった副次効果が得られます。
リモートアクセスの導入によってテレワークが定着した場合、さまざまなコスト削減にもつながります。例えば、出社する従業員が減ればオフィスの縮小が可能になり、光熱費や通信費、従業員の移動費などを大きく削減することができるでしょう。
また、社外からのアクセスを可能にしておけば、高価なアプリケーションを人数分導入する必要がなく、アプリの数も減らせます。リモートアクセスできるため、業務に必要なアプリは、社内のパソコンにのみインストールしておけば問題ありません。
自宅や出張先などで作業をする場合、従来は社内のパソコンを持ち出すのが一般的でしたが、この方法には端末の紛失や盗難により社内の機密情報が流出してしまうリスクがありました。
その点、リモートアクセスであれば、自宅や外出先からでも社内のパソコン環境を利用できるため、端末を持ち出す必要がありません。社内の端末を持ち出さなくなれば、端末やデータの紛失や、盗難のリスクを抑えられるため、セキュリティレベルの向上が期待できます。
また、社外で使用する端末にデータが保存されることもないため、情報漏洩のリスクも軽減できるでしょう。
大規模な自然災害や、新型コロナウイルスのような疫病の危機などが発生すると、オフィスへの出社が難しくなることも考えられます。リモートアクセス可能な環境が整備されていれば、有事の際であっても、自宅にいながら社内のパソコンにアクセスすることが可能です。
例えば、災害でダウンしたシステムを復旧できる担当者が出社できなくても、自宅から迅速に対応できれば事業を継続することができます。リモートアクセスは、BCP対策の一環としても効果的であるといえるでしょう。
■参考記事
サイバーBCPとは?策定のための8ステップと対策方法を解説
リモートアクセスを導入する際には、想定されるリスクや、必要な環境設定について知っておく必要があります。以下の3点に注意し、導入後のトラブルを未然に防ぎましょう。
リモートアクセスはインターネットを介して行われるため、通信品質に左右されやすい性質があります。
そのため、リモートアクセスを導入する前に、現行のインターネット回線を見直す必要があります。通信品質に問題ある場合は、高速なインターネット回線に乗り換えるといった対策を講じるとよいでしょう。
速度が遅いと、操作にラグが発生したり、ページの読み込みに遅延が生まれたりする可能性があり、従業員がストレスを感じてしまう可能性があります。
また、ホストとなる端末が無線でインターネットに接続されている場合にも、スピードが低下するケースがあるため、有線に切り替えることを検討してみてください。
リモートアクセスには、端末やデータの持ち出しによる紛失や盗難といった、セキュリティリスクを抑えられる特徴があります。しかし、インターネットを使用するため、不正アクセスやマルウェア感染といったリスクはどうしても発生してしまいます。
リモートアクセスを導入したからといって、完全にセキュリティリスクを無くすことはできないため、問題に応じた対策をしてください。
導入時には、セキュリティレベルの高い接続方式を採用したり、セキュリティソフトを充実させたりといった方法が有効です。また、ヒューマンエラーによるセキュリティトラブルを防ぐため、セキュリティや情報の取り扱いに関する社員教育を徹底することも重要となります。
リモートアクセスを導入する場合には、オンラインでできる作業のみ行えれば問題ないのか、オフライン下でも作業ができないと支障があるのかといった点について検討しましょう。
社外においてオフライン業務が必要なら、社外で用いるパソコンに作業データなどを保存しておく必要があります。
オフラインでの作業が必要な場合は、データを使用端末にダウンロードできるよう、VPN接続を検討するとよいでしょう。スムーズに業務を進められるよう、導入の前にどのような準備が必要なのかを洗い出すことが重要です。
\安全なリモートアクセスを実現!/
リモートアクセスの接続方法を選択する際には、自社に適したものを選ぶ必要があります。下表は、それぞれの接続方法のセキュリティレベルやコストなどについてまとめたものです。
VPN | リモート デスクトップ |
仮想デスクトップ (VDI) |
リモートアクセスサービス | API接続 | |
導入までの期間 | 〇 | ◎ | △ | 〇 | ◎ |
システムの拡張 | 〇 | △ | 〇 | 〇 | ◎ |
導入コスト | △ | ◎ | △ | ◎ | 〇 |
セキュリティレベル | ◎ | △ | ◎ | △ | 〇 |
以下、リモートアクセスを選ぶときのポイントを解説します。
導入時の費用や面倒な手間を少しでも抑えたい場合は、「リモートデスクトップ」または「API接続」の方式がおすすめです。
リモートデスクトップは、IPアドレスの固定、ポート開放などが必要なく、Windowsであれば10以降のバージョンには機能が標準搭載されているため、新たなツールを導入する必要もありません。
VPNは比較的コストがかかりますが、接続方式によってはコストを抑えられます。なかでも、インターネットVPNは低コストで導入することが可能です。
■参考記事
VPN接続の種類は4つ!それぞれの違いを詳しく解説
セキュリティレベルの高いリモートアクセス環境を構築したい場合には、「VPN」および「仮想デスクトップ」が向いています。
VPNのなかでは最もセキュリティレベルが高く、閉域網を用いるため通信速度も安定している「IP-VPN」がおすすめです。
仮想デスクトップは、OSの更新を含むすべての設定を管理者が一元管理できるため、柔軟にセキュリティレベルを強化しやすい点が特徴です。ただし、社外の端末にデータ保存することを制限したい場合には、リモートデスクトップのほうが適しているでしょう。
将来的に従業員が増えてシステムの拡張が必要になることが想定されるケースでは、システムの拡張性に優れた接続方式を選ぶのがおすすめです。
最も拡張性に優れているのは「API接続」で、公開されているプログラムの活用や、独自のアプリケーションを開発すれば、自由に機能を拡張していくことができます。
API接続に次いで適しているのが「VPN」と「仮想デスクトップ」ですが、自社サーバーに構築するオンプレミス型とは異なります。クラウド型の仮想デスクトップはサービス提供者が仕様を決めているため、拡張性は比較的低いことを念頭に置いておきましょう。
リモートアクセスを導入すると、テレワークの導入がスムーズに行えたり、コスト削減が実現したりといったメリットがあります。
一方で、自社に適さない接続方法で導入してしまうと、業務が円滑にまわらない、費用対効果が悪いといったトラブルにつながる可能性があるため、慎重に検討する必要があります。
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