拠点間のネットワーク構築にあたって、専用回線の導入が候補に挙がっているものの、本当に自社に適しているかわからないとお悩みではありませんか。
専用回線は高いセキュリティレベルの通信環境を実現できますが、拠点の数や予算によっては適さないケースもあります。
また、場合によってはVPNのほうが向いているパターンもあるため、VPNとの違いについても理解を深めておくとよいでしょう。
この記事では、専用回線の概要や仕組み、活用シーン、VPNとの違いなどについて解説していきます。自社の状況と照らし合わせ、適切なネットワーク回線を導入するための参考にしてください。
目次
専用回線(専用線)とは、本社と支社など、拠点同士を接続するために用いられる専用のネットワーク回線のことを指します。
二つの拠点の間を物理的に接続していて関係者以外は回線にアクセスできないため、一定の通信速度が維持できるほか、容量の大きなデータがやり取りできるといったメリットがあります。
利用者自身が回線を設置する私設回線とは違い、通信事業者が提供する回線を使用し、光信号をデジタル回線に変換する「ONU(光回線終端装置)」、ネットワークを中継するための「L3スイッチ」などを各拠点に設置して利用するのが一般的です。
単独回線のみで接続していた従来の方法では、回線に障害が起きた場合、すべての通信が遮断されてしまうという課題がありました。
しかし近年の専用回線では、予備システムを用意し、トラブルが起こると通信経路を自動で切り替える経路制御プロトコルを活用することで障害発生時でも安定した通信環境を確保できるようになっています。
専用回線には、速度が安定している、高いセキュリティレベルを実現できるといったメリットがあります。
以下、専用回線のメリットを紹介するので、特徴と合わせて確認しておきましょう。
専用回線は、通信の速度や品質を保証する「ギャランティ型」の契約形態になり、帯域が確保され、契約で定められたとおりの通信速度を維持できるのが特徴です。
このギャランティ型に対して「ベストエフォート型」は、通信回線の最大通信速度を上限として、それに近づくよう最大限に努力した契約形態であるため、混雑状況によっては通信速度が遅くなることがあります。
これらの違いから、安定した通信環境でネットワークを構築したい場合は専用回線が適しているといえるでしょう。
関係者以外がアクセスできない専用回線は、第三者の影響を受ける心配がありません。
不特定多数のユーザーと回線を共有する場合、データ容量が増えるとともに回線が混み合い、速度低下やシステムダウンなどの輻輳(ふくそう)が起きやすくなります。
その点、専用回線ならビデオ会議、動画コンテンツやアプリなどの大容量データの送受信を行うケースでもトラブルが発生しにくい特徴があります。遅延なく業務を遂行したい場合には、専用回線を選ぶとよいでしょう。
専用回線は、通信品質の安定性に優れているだけでなく、セキュリティの面でもメリットがあります。
回線が独立しているということは、ほかの回線から物理的に隔離されているということでもあります。そのため、関係者以外が専用回線に侵入するのは困難で、データの盗聴やハッキングなどのリスクを抑えることが可能です。
専用回線に対して、広域網のネットワークであるインターネット回線は、不特定多数のユーザーが利用するためセキュリティリスクが高まりやすい傾向にあります。
機密情報のやり取りが多い企業にとって、セキュリティレベルの高い専用回線は、適切な選択肢だといえるでしょう。
外部の影響を受けない専用回線は、高い可用性(システムが継続して稼働できる能力)を持っています。
また、性能や構成、データの内容などが同一のシステムや設備をスペアとして準備しておくと、冗長化に役立ち、トラブルによる回線の遮断を避けることが可能です。
例えば、東京、大阪、名古屋間で接続する場合、東海ルートと大垣ルートで冗長化するケースが考えられるでしょう。これにより、一方に障害が生じても別ルートが稼働するため、ネットワーク障害のリスクをカバーできます。
災害時のシステムダウンにも対応しやすく、BCP対策としても有効です。
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専用回線にはメリットだけではなく、以下のようなデメリットもあります。
以下で一つずつ解説していくので、メリットと合わせて確認してください。
専用回線は独立した回線を利用するため、複数人で回線を共有するケースと比べ、どうしても費用が高額になります。
また、契約者ごとに回線を敷設するための工事が必要なので、別途工事費がかかるのも難点です。専用回線の料金は、接続する拠点間の距離、契約する帯域によって変動し、遠距離をつなぐ場合には距離に応じた費用が必要になります。
このように、利用条件によっては運用コストが大きく跳ね上がる可能性がある点にも注意しなければなりません。
専用回線の対応範囲は、あくまで1対1での2拠点間のみです。そのため、3拠点以上でネットワークを構築するパターンには対応していません。
拠点数が多い企業で専用線を敷設する場合は、それぞれの支社に対し、本社とつながる専用回線を敷設する必要があります。例えば本社Aと、支社B、支社C、支社Dの4拠点がある場合、「A・B間」「A・C間」「A・D間」の、計3本の専用回線が必要です。
ただし、これではあまりにもコストが高額になるため、拠点の多い大企業にとっては現実的な選択肢ではないかもしれません。3拠点以上でネットワークを構築するケースでは、専用回線ではなくVPNのほうが適しているでしょう。
専用線の導入や増設では、大がかりな回線工事が必要になるため、一般的なブロードバンド回線を利用するよりも手間がかかります。
そのため、導入や増設にあたってある程度、余裕を持ったスケジュール設定が必要になるため、速やかな回線の構築を求めるのであれば適さない場合があります。
また、ネットワークの監視や運用、管理を自社で行う必要があり、専任者が必要になるほか、メンテナンス工数がかかる点も考慮に入れておくことが重要です。
ここからは、専用回線が実際にどのような場面で使用されているのかを見ていきましょう。自社の業務内容と照らし合わせ、専用回線の必要性を見極めてください。
専用回線は帯域が確保され、ほかのユーザーの影響を受けることがないため、大規模なデータの送受信を行う場合でも、安定したやり取りが可能になります。混雑による遅延も発生しにくいので、普段から高容量のデータを取り扱っている企業も安心です。
以下のような企業では、専用回線の仕様を検討するとよいでしょう。
専用回線は、外部から独立しているため、高いセキュリティレベルを確保できるのが特徴です。
不特定多数がアクセスできる回線ではないので、第三者の侵入、データの盗聴や改ざんといったリスクを抑えることが可能です。
そのため、以下のように、高度なセキュリティが求められる企業に向いているでしょう。
可用性が高く、障害が発生した際のシステムダウンリスクが低いのも、専用回線の利点です。このメリットを活かし、公共インフラを担う電力会社や鉄道会社、消防、警察といったシステムが停止した場合に大きな問題となるであろう業種や業態に向いています。
専用回線と同じく、セキュリティ対策に有効なのがVPNですが、この二つには大きな違いがあります。それぞれの特徴を理解したうえで、どちらが自社に合っているのかを判断してください。
以下、専用回線とVPN(仮想専用通信網)の違いと、それぞれの使い分けについて解説します。
VPN(Virtual Private Network)は、物理的な回線を敷設する専用回線と異なり、ネットワーク上に仮想の専用線を構築する仕組みです。
トンネリング、暗号化、認証などの技術が活用されているVPNは、専用回線ほどではありませんが、高いセキュリティ強度を誇ります。
一口にVPNといっても、インターネットVPNやIP-VPNといった複数の種類に分かれるため、下表でそれぞれの違いを確認してください。
専用回線 | IP-VPN | エントリーVPN | インターネットVPN | |
コスト | C | B | A | A |
セキュリティ | A | B | B | C |
通信品質 | A | A | B | C |
管理 | C | B | B | A |
A:優れている、B:比較的優れている、C:やや劣る
専用回線は、コストが高額になり専任者も必要ですが、高いセキュリティレベルと通信品質を有しています。
一方のVPNは、選択肢によって費用が異なり、セキュリティレベルにも差が出るため、よく比較し慎重に検討する必要があるでしょう。
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VPNは、専用線よりも低コストで導入でき、大規模な工事も必要ないため拡張性にも優れています。その代わり、専用線に比べてセキュリティ面が見劣りする、通信品質を確保しにくいといったデメリットもあります。
このような点から、VPNは次のようなシーンでの活用に向いているでしょう。
VPNは、専用線と異なり、スピーディーに導入することが可能なため、オフィスの増減や移動にも柔軟に対応することが可能です。
専用回線は、拠点間を物理的につなぐため、高いセキュリティレベルと安定した通信環境を構築することが可能です。
一方で、導入コストがかかる、3拠点以上のネットワーク構築には適していないというデメリットもあります。
企業のネットワークを構築する手段としては、専用回線のほかにVPNがあります。それぞれのメリットとデメリットを把握したうえで、自社に適切な方法を選びましょう。
日本通信ネットワークの「FLESPEEQ VPN」は、通信キャリアの閉域網に構築するため、インターネットVPNとは異なり、安定してセキュアな通信環境を実現します。
一般的にIP-VPNはコスト面の負担が大きくなりますが、当社では多くのお客様に安全な通信環境をご提供するため、価格を業界最安値クラスの9,800円〜(税抜)に設定しております。
日本通信ネットワークでは、専用線のご提供も可能なため、「専用回線とVPNのどちらが適しているかわからない」という場合も、ぜひお気軽にご相談ください。
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