「ひとり情シス」とは、情報システム(情シス)部門のリソースが不足している状態を指します。
情シス部門の人材不足は、近年あらゆる業界が共通して抱える課題です。
本記事では、ひとり情シスの概要や増えている背景、問題の詳細について解説していきます。
そのうえで、解決策についても紹介しているので、ひとり情シスに悩んでいる方はぜひ参考にして下さい。
ひとり情シスとは、必ずしも情報システム担当者が一人きりの状態を指すものではありません。
ここでは「ひとり情シス」の定義と、その状態が発生する原因、企業の現状について解説しています。
ひとり情シスとは、社内の情報システム担当者の人数が、極めて少ない状態を指す言葉として用いられています。
規模が小さい企業では文字どおり1人で担当しているケースが多いですが、会社の規模が大きい場合は担当者が2〜3人いても、その負担の大きさからひとり情シスに該当します。
情報システム担当者は、社内システムの保守管理や社内インフラの構築、運用を担う重要な役職です。社内システムやインフラにトラブルが生じれば、一時的にでも業務が中断されかねません。
そのため、ひとり情シスの状態は業務に支障をきたしやすく、企業運営において数多くのリスクが発生する可能性があります。
重要なポジションであるはずの情報システム部門で、ひとり情シスが発生する主な原因としては、以下のようなことが挙げられます。
・そもそも従業員数が少なく、情報システム領域にあてる余裕がない
・IT分野に詳しい人材が不足しており、担当者が見つからない
ひとり情シスは、どうしても人的リソースが限定的になりやすい中小・零細企業において、とくに発生しがちな問題です。
また、比較的大きな企業であっても、IT人材が不足していればひとり情シス状態が課題になることもあるでしょう。
ひとり情シス状態になる企業が増えている背景には、IT人材の不足や、業務の必要性が組織内で理解されていないことなどが挙げられます。
便利なクラウドサービスも登場していますが、十分に活用されておらず、情報システム部門の負担が思うように軽減されていないケースも見受けられます。
一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会の「企業IT動向調査2023」によると、企業の規模にかかわらず、社会全体でIT人材が不足している状況がわかります。
IT人材に対して「おおむね充足」との回答率が過半数を超えているのは、運用管理やベンダーマネジメントの領域くらいなもので、そのほかの領域では50%を下回るケースが少なくありません。
とくにDX推進やデータ分析などの分野では、「不足」と答える割合が8〜9割に達し、人手不足が顕著に表れています。
少子高齢化の影響もあり、IT人材の需要が不足する状況は今後も続いていく可能性が高いといえるでしょう。
社内システムやITインフラの運用といった重要な業務を担う情報システム部門ですが、直接的な利益を生むわけではないことから、その必要性が理解されにくい傾向があります。
こうした事情により、多くの企業で情シス部門にあてられる予算や人材が後回しにされ、人材採用や育成が進まないケースも珍しくありません。
また組織上層部にITリテラシーが欠如している場合、どの程度の知識や技術、人数が必要なのかがわからず、組織運営がおろそかになることも懸念されます。
経営陣の認識不足が顕著であれば、年々複雑化し高度になりつつある業務の困難さを理解するのは難しいでしょう。
クラウドサービスを活用すると、自社でサーバーやソフトウエアを導入する必要がなく、運用・管理工数を大幅に削減することが可能になります。
しかし、これにより情報システム部門の業務量が減ったと誤解され、人員が削減されてしまう事例も少なくありません。
実際には、多くのクラウドサービスにより社内の業務システムが増えると、各アカウントやデータの管理、連携手段など、対応範囲も増えていきます。
このほか、多様化するサイバー攻撃を防ぐために、セキュリティ分野でも対応が求められ、担当者の負担が軽減されていないケースも見受けられます。
情報システム部門でのリソース不足は、セキュリティや人材確保など、以下のようにさまざまな問題が懸念されます。
企業はひとり情シスの問題点を理解したうえで、適切な対処方法を検討する必要があるでしょう。
ひとり情シスで深刻な問題になりがちなのが、企業のセキュリティ面です。
企業は多様化するサイバー攻撃へ対処し、あらゆる脅威から自社ネットワークを守らなければなりませんが、人手不足ではいざというときに対処できない可能性があります。
セキュリティトラブルへの対処も情報システム部門の役割ですが、ひとり情シスのように十分なリソースを確保できていない状態では、トラブル発生時の対応が遅れてしまうことが考えられます。万が一顧客情報や機密情報が外部に流出してしまうと、企業イメージが低下したり、法的な責任を問われたりする可能性も考えられるでしょう。
情報システム部門の業務は、システム管理やセキュリティ対策だけでなく、システム障害への対応や社内システムのサポートなど多岐にわたります。
ひとり情シスの状態では、これだけの量の業務を1人または少数の人員で行うため、担当者に過大な負荷がかかってしまうでしょう。
その結果、ストレスやフラストレーションが溜まって離職したり、組織内のモチベーションが著しく下がったりと、多くの問題が発生する可能性があります。
ひとり情シスの担当者は、システムに関するすべての業務を抱えるうえに専門性が高く、他部門の人材ではその業務を補えないケースが多くあります。
そのため、担当者が不在時のシステム管理やトラブルへの対応が難しくなり、ひとり情シスの担当者以外に誰も対応できないという状況が発生することで、業務が停滞してしまう場合があるでしょう。
このような属人化が慢性化すれば、業務品質が低下する可能性も考えられます。
仮に情報システム担当者が1人しかいない場合、その人が離職してしまうと、後任者への引き継ぎが難しくなります。
前任者が担っていた膨大な量の業務を後任者に引き継ぐ必要があるため、後任の担当者が業務に支障をきたす可能性もあるでしょう。
また、引き継いだ業務量の多さから後任者がストレスを抱えてしまえば、繰り返し離職が発生するといった悪循環に陥ることも考えられます。
そのため、組織単位で情報システム部門に対するリテラシーを高める、マニュアルや仕組みを構築するなどの対策をとり、情シス担当者の負担を軽減する必要があるでしょう。
関連記事:ひとり情シスの退職問題に対処するには?離職後の課題と対策方法を解説
ここまでにご紹介したとおり、ひとり情シスの状態は、セキュリティや担当者へ過度な負担など、さまざまな問題の原因になります。
そのため、企業は情報システムへの理解を深めたうえで、自社に適したひとり情シス対策を行うのが望ましいでしょう。
ここでは、ひとり情シスの対策として、3つの方法を紹介していきます。
IT人材を新たに雇用する、あるいは社内で担当者を育成することで、ひとり情シス問題の解消につながります。
社内で情シス担当者を育成する場合には、ITスキルのある人材を社内から探してそのスキルレベルを把握し、目標を設定することから始めるとよいでしょう。
人材育成の目的を明確にし、求めるスキルセットに応じて社内OJTや社外研修によってスキルアップを図っていくことが大切です。
また業界全体で人手不足が慢性化する現代では、新たに人材を確保することも難しいため、給与や福利厚生など、待遇面の改善も重要なポイントです。
ITツールを導入して1人あたりの生産性や業務効率を高めれば、情シス部門の負担を軽減できるでしょう。
たとえば、ヘルプデスクの対応に手を焼いている場合は、チャットボットや社内FAQツールの導入が効果的です。
社内やユーザーからの質問に対してAIが自動で回答してくれるため、問題の自力解決を促せます。
これによって情シス部門が対応する問い合わせ件数を削減し、担当者がコア業務に注力できるのが大きなメリットです。
このほか、情報のやり取りに時間がかかる電話やメールを、チャットツールに置き換えるだけでも、業務を効率化することが可能です。
情シス部門が抱えている課題を明確にし、適したツールを導入することでも、ひとり情シス対策が行えるでしょう。
社内での人材育成や新規雇用が難しいケースでは、情報システムの運用や保守にアウトソースを活用するのも一つの手です。
アウトソーシング企業は、情報システム分野での運用や保守経験を豊富に持っているので、迅速にトラブル対応することが可能です。
ノウハウや知識を専門企業に共有してもらえるため、自社の情シス部門のスキルアップも図れるでしょう。
ただし、外部企業に業務の一部を委託する以上、社内の情報が分散される点には注意しなければなりません。
またアウトソーシング企業に機密情報を提供するケースもあるため、セキュリティリスクが高まることも考慮する必要があります。
そのため、アウトソースを活用する場合は、複数のサービスを比較し、実績やセキュリティ体制を確認したうえで信頼できる企業を選びましょう。
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情報システム部門を1人または少人数で管理するひとり情シスは、リソース不足による長時間勤務の発生、多岐にわたる業務の圧迫といった担当者への負担増大が懸念されます。
ひとり情シスの対策には、社内で人材を育成するほか、アウトソースを活用するのが有効ですが、外部委託はセキュリティリスクが生じるため、信頼できるサービスを選ぶことが大切です。
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