【5分で解説】サプライチェーン攻撃とは?自社が「踏み台」になる経営リスクと3つの必須対策

2026.02.04

セキュリティ

【5分で解説】サプライチェーン攻撃とは?自社が「踏み台」になる経営リスクと3つの必須対策

サプライチェーン攻撃とは、標的とする企業を直接狙うのではなく、取引先や委託先といった「つながり」を悪用して侵入するサイバー攻撃です。近年、クラウドの普及や業務委託の拡大により外部との接点が増え、この攻撃による被害が急増しています。

自社が直接狙われていなくても、守りの手薄な関連企業が「踏み台」にされることで、連鎖的に自社の情報資産が脅かされるリスクがあります。もはや一部の大企業だけの問題ではなく、あらゆる企業が当事者となり得る深刻な脅威です。
本記事では、サプライチェーン攻撃の仕組みや具体事例、企業が直面するリスクを整理し、現実的に取り組むべき多層的な対策について詳しく解説します。

サプライチェーン攻撃とは?その定義と増加する背景

現代のビジネス環境において、企業はもはや単独で完結せず、多くの取引先やサービスと複雑に連携しています。この相互接続性が利便性を生む一方で、サイバー攻撃者にとっては格好の「抜け穴」となっているのが現状です。

近年、標的となる組織を直接狙うのではなく、そのネットワークの「鎖(サプライチェーン)」の弱点を突く手法が急増しています。

サプライチェーン攻撃の定義

サプライチェーン攻撃とは、本命となる企業や組織のシステムや情報資産を直接狙うのではなく、その企業と業務上の関係を持つ第三者を経由して侵入する攻撃手法です。攻撃者は、セキュリティ対策が比較的弱いと考えられる企業や委託先を最初の標的とし、そこから本命企業へと段階的に侵入していきます。

この攻撃手法の特徴は、「間接的な侵入経路」を利用する点にあります。システム保守会社や運用代行会社、開発ベンダーなどは、業務上の必要性から本命企業のシステムに正規にアクセスできる権限を持っているケースが多く存在します。攻撃者はこの構造を悪用し、正規のアクセス経路を装って侵入します。

特に問題となるのが、VPN接続やリモートアクセス、管理者アカウントなどの正規権限です。これらが悪用された場合、本命企業側では通信が「正当な業務通信」として処理されるため、不審な挙動として検知されにくくなります。ログ上は通常業務と区別がつかず、侵入に気づくまでに時間がかかるケースも少なくありません。

また、サプライチェーン攻撃は「自社が被害者になる」だけでなく、「自社が踏み台になって他社に被害を与える側になる」リスクも持っています。自社のセキュリティ対策が不十分であった場合、取引先や顧客企業に被害が拡大し、信用低下や契約見直し、取引停止などの経営リスクにつながる可能性もあります。

このように、サプライチェーン攻撃は単なる技術的な侵入手法ではなく、企業間の信頼関係や業務構造そのものを悪用する攻撃であり、「自社の対策だけを強化すればよい」という考え方では防ぎきれない脅威となっています。

なぜサプライチェーン攻撃が増えているのか

サプライチェーン攻撃が増加している背景には、複数の構造的な要因があります。最大の理由は、攻撃者にとって効率が良く、成功確率が高い攻撃手法である点です。

大企業や重要インフラを直接攻撃する場合、高度なセキュリティ対策や監視体制が整備されており、侵入の難易度は年々高くなっています。一方で、取引先や業務委託先には十分なセキュリティ投資がされていないケースも多く、攻撃者にとっては侵入しやすい対象となります。攻撃者はこの「守りの差」を見極め、あえて弱い部分から侵入する戦略を取ります。

また、企業のIT環境の変化も大きな要因です。クラウドサービスやSaaSの普及、業務委託やアウトソーシングの拡大により、企業は多くの外部サービスや外部組織とシステム的につながるようになりました。その結果、「自社の管理外にある領域」が拡大し、攻撃者にとっての侵入口も増加しています。

さらに、サプライチェーン攻撃は発覚しにくいという特徴があります。正規アカウントや正規通信経路を利用するため、侵入後も通常業務通信として扱われやすく、被害が顕在化するまで時間がかかるケースが少なくありません。攻撃者にとっては長期間潜伏しやすく、情報を継続的に収集できるというメリットがあります。

加えて、過去に成功したサプライチェーン攻撃の事例が報道されることで、攻撃者側に「この手法は有効である」という認識が広まり、同様の手口が模倣されるようになっています。これらの要因が重なり、サプライチェーン攻撃は現在も増加傾向にあり、今後も企業にとって無視できない脅威であり続けると考えられます。

サプライチェーン攻撃の主な仕組みとパターン

サプライチェーン攻撃の主な仕組みとパターンのイメージ図

サプライチェーン攻撃にはいくつかの代表的な侵入パターンが存在します。企業の業態や外部との関わり方によって、狙われやすいポイントは異なりますが、共通しているのは「企業同士のつながり」が侵入経路になる点です。

業務効率化やIT化の進展により、企業は多くの外部企業・外部サービスとシステム的につながっています。その結果、セキュリティ対策の強度にばらつきが生じ、攻撃者にとって狙いやすい侵入口が生まれやすくなっています。

ここでは、サプライチェーン攻撃の中でも特に多く見られる代表的なパターンについて解説します。

取引先・委託先を踏み台にするケース

サプライチェーン攻撃の中で、最も多くの割合を占めているのが、取引先や委託先を「踏み台」にする手口です。攻撃者が特に標的とするのは、システム保守やソフトウェア開発を担うパートナー企業です。これらの企業は業務を遂行するために、ターゲット企業のネットワークへの正規のアクセス権限を持っていることが多く、攻撃者にとっては最も効率的な「侵入口」となります。

最大の問題は、委託先の端末が乗っ取られ、そこからVPN等を通じて侵入された場合、自社側のシステムログには「正規の業務通信」として記録される点です。通常業務のアクセスと区別がつかないため、不審な挙動として検知することが極めて難しく、被害が深刻化するまで発覚が遅れる構造になっています。

たとえ契約書でセキュリティ規定を交わしていても、実際の運用が形骸化していたり、委託先の端末管理に不備があったりすれば、その脆弱性は即座に自社のリスクへと直結します。「専門業者に委託しているから安心」という認識は捨て、権限があるからこそ「狙われる」という意識への転換が必要です。自社の対策強化のみならず、委託先の管理状況まで含めて継続的に評価・対策していく姿勢が強く求められています。

ソフトウェア・アップデートを悪用するケース

ソフトウェアやシステムのアップデート機能を悪用するサプライチェーン攻撃も、多くの被害を生んでいる代表的な手法です。このパターンでは、正規のソフトウェア提供元の開発環境や更新サーバーが侵害され、不正なプログラムがアップデートファイルに混入されます。

利用者側では、通常の更新作業としてアップデートを実行するため、気づかないままマルウェアをインストールしてしまいます。正規ベンダーから提供されるアップデートであることから、警戒心が働きにくく、セキュリティソフトでも検知が遅れるケースがあります。

この手法の最大の特徴は、同じソフトウェアを利用している多数の企業が一斉に感染するリスクがある点です。企業規模や業種を問わず、広範囲に被害が拡大する可能性があります。

また、アップデート経由で侵入されると、被害が発覚するまでに時間がかかることが多く、情報漏えいやデータ改ざんといった二次被害につながりやすい点も大きなリスクとなります。

「信頼している仕組み」そのものが攻撃経路になる点が、このパターンの最も危険な特徴であり、企業側の想定外の侵入ルートとなります。

クラウド・ID連携を狙うケース

クラウドサービスやSaaS、外部ツールとのID連携を狙うサプライチェーン攻撃も増えています。業務効率化のために複数のサービスを連携させることで利便性は高まりますが、その一方でリスクも拡大しています。

複数のサービスで同一のID・パスワードを使い回している場合、どこか一つのサービスが侵害されると、連鎖的に他のシステムへも不正アクセスされる可能性があります。シングルサインオン(SSO)などの仕組みは利便性が高い一方で、1つの認証情報の侵害が広範囲の被害につながる構造を持っています。

また、権限を持ちすぎているアカウント(管理者権限、広範な操作権限を持つアカウント)が侵害されると、攻撃者にとって非常に有利な状態となります。API連携や外部ツール連携の設定不備、権限管理の甘さも侵入口となるケースがあります。

業務効率を優先して連携を増やした結果、管理が追いついていないケースも多く、不要な連携設定や使われていないアカウントが放置されているケースも少なくありません。こうした運用上の甘さが、サプライチェーン攻撃の侵入経路となることがあります。

実際に発生したサプライチェーン攻撃の事例

サプライチェーン攻撃は、理論上のリスクではなく、すでに国内外で多数の実被害を生んでいます。しかもその多くは、大企業だけでなく中小企業や委託先企業も巻き込む形で被害が拡大しています。

ここでは、代表的な事例を通じて、サプライチェーン攻撃がどのような形で発生し、どのような影響を及ぼすのかを整理します。

国内外で発生した代表的な事例

海外では、ソフトウェアアップデートを悪用した大規模なサプライチェーン攻撃が発生し、多数の企業・政府機関が影響を受けた事例が報告されています。正規の更新プログラムに不正コードが混入され、それを利用者が通常のアップデートとしてインストールしたことで、気づかないうちに侵入を許す形となりました。

このケースでは、攻撃者は長期間にわたり内部ネットワークに潜伏し、情報収集や不正アクセスを継続的に行っていたことが判明しています。被害が発覚した時点では、すでに多くの情報が流出しており、影響範囲の特定や復旧対応に多大な時間とコストがかかりました。

国内においても、システム保守会社や運用委託先が侵害され、そこを経由して複数の取引先企業に被害が拡大する事例が報告されています。委託先の端末がマルウェアに感染し、正規のリモート接続経路を通じて本命企業のシステムに侵入されたケースでは、企業側が侵入に気づくまで長期間を要しました。

これらの事例に共通するのは、「正規の仕組みが悪用された」という点です。正規ベンダー、正規アップデート、正規アクセス経路という“信頼の仕組み”そのものが攻撃経路となることで、企業側の検知が遅れ、被害が拡大しました。

 

参考記事:情報セキュリティ事件の有名事例11選|原因別に徹底解説

中小企業にも広がる被害リスク

サプライチェーン攻撃のリスクは、大企業や重要インフラ企業だけの問題ではありません。むしろ、中小企業こそ狙われやすい構造があります。

中小企業は、限られたIT予算や人員体制の中で運用を行っているケースが多く、セキュリティ対策が後回しになりやすい傾向があります。また、取引先企業との関係上、VPN接続やリモートアクセス、システム連携などの権限を付与されているケースも多く存在します。

攻撃者にとっては、中小企業は「侵入しやすく」「踏み台として価値が高い」存在となりやすく、最初の標的にされる可能性があります。一度侵入されると、自社の被害だけでなく、取引先企業や顧客企業への被害拡大につながるリスクがあります。

実際に、中小企業が踏み台となり、大企業や医療機関、自治体などに被害が波及した事例も報告されています。このようなケースでは、自社の被害対応だけでなく、取引先との信頼関係や契約関係への影響、損害賠償リスクなど、経営面への影響も大きくなります。

サプライチェーン攻撃は、企業規模に関係なく「関係性の中にいるすべての企業」が当事者となる攻撃であり、「うちは小規模だから狙われない」という考え方は通用しなくなっています。

企業が直面するサプライチェーンリスク

企業が直面するサプライチェーンリスクのイメージ図

サプライチェーン攻撃は、単なる情報漏えいやシステム障害にとどまらず、企業経営そのものに大きな影響を与えるリスクを内包しています。技術的な問題としてだけ捉えるのではなく、経営リスク・事業リスクとして捉える必要があります。

ここでは、企業がサプライチェーン攻撃によって直面する代表的なリスクポイントについて整理します。

セキュリティ管理の分断リスク

サプライチェーン構造における最大の課題の一つが、セキュリティ管理の分断です。企業内部では一定のセキュリティポリシーや運用ルールが整備されていても、外部企業や委託先に対して同水準の管理体制を求めることは容易ではありません。

取引先企業ごとにセキュリティ対策の成熟度には大きな差があり、対策レベルのばらつきが生じます。この「ばらつき」がそのまま攻撃者にとっての侵入口となります。

また、外部委託が増えることで、自社の管理範囲外のシステムや端末が業務に深く関与するようになります。結果として、「誰が」「どこまで」「何にアクセスできるのか」を正確に把握できなくなるケースも多くなります。

管理対象の拡大と複雑化により、セキュリティガバナンスが分断され、統一的な管理が困難になる点が大きなリスクとなります。

運用管理の属人化リスク

サプライチェーン環境では、システム運用やアクセス権限管理が属人化しやすい傾向があります。特定の担当者のみがシステム構成や連携関係を把握しているケースも少なくありません。

属人化が進むと、異動や退職、担当変更時に管理情報が引き継がれず、不要なアカウントや連携設定が放置されるリスクが高まります。このような状態は、攻撃者にとって侵入経路を見つけやすい環境となります。

また、緊急対応や例外対応として付与されたアクセス権限が、そのまま恒常的な権限として残り続けるケースもあります。運用上の利便性を優先した結果、セキュリティリスクが蓄積していく構造が生まれます。

信頼関係の崩壊リスク

サプライチェーン攻撃の被害は、技術的な問題だけでなく、企業間の信頼関係に大きな影響を及ぼします。自社が被害者になる場合だけでなく、「踏み台」となった場合の影響はより深刻です。

自社が原因となって取引先や顧客企業に被害が及んだ場合、信頼関係の毀損、契約解除、取引停止といった事態につながる可能性があります。長年築いてきた取引関係が一度の事故で失われるケースも現実に存在します。

また、ブランド価値の低下や社会的評価への影響も無視できません。情報漏えい事故やサイバー攻撃被害は報道されやすく、企業イメージへの影響が長期化する可能性があります。

経営・事業継続リスク

サプライチェーン攻撃は、事業継続そのものを脅かすリスクを持っています。システム停止による業務停止、データ消失、業務復旧にかかるコスト、調査対応費用、法的対応など、経営面への影響は多岐にわたります。

特に、重要システムや基幹システムが侵害された場合、業務停止期間が長期化する可能性があり、売上損失や顧客離れといった直接的な損害が発生します。

さらに、被害対応においては、技術対応だけでなく、顧客対応、広報対応、法務対応、監督官庁対応など、多方面での対応が必要となり、組織全体に大きな負担がかかります。

サプライチェーン攻撃は単なるITリスクではなく、企業経営の根幹に関わるリスクであるという認識が求められます。

 

企業が取り組むべきサプライチェーン攻撃対策

サプライチェーン攻撃は、単一の対策だけで防げるものではありません。技術的対策、運用対策、組織的対策を組み合わせた多層的な対策が必要となります。

重要なのは、「自社だけを守るセキュリティ」から「つながり全体を守るセキュリティ」と視点を広げることです。自社の対策強化だけでなく、外部との関係性や構造そのものを見直すことが求められます。

技術的対策(システム・ネットワーク面)

技術的な観点では、まずネットワーク構成とアクセス権限の見直しが重要です。外部接続経路(VPN、リモートアクセス、クラウド連携、API連携など)を洗い出し、不要な接続や過剰な権限付与がないかを確認する必要があります。

特に、管理者権限を持つアカウントや広範な操作権限を持つアカウントについては、最小権限原則(必要最小限の権限付与)を徹底することが重要です。また、多要素認証(MFA)の導入により、認証情報の侵害リスクを低減することも有効です。

ネットワーク分離やセグメンテーションの導入も、被害拡大防止の観点から重要な対策となります。一部のシステムが侵害されても、全体に被害が広がらない構造を構築することで、リスクを限定化できます。

ログ監視や異常検知の仕組みを整備し、正規通信を装った不審な挙動を検知できる体制を構築することも重要です。

運用的対策(ルール・管理体制)

運用面では、外部委託先・取引先とのセキュリティ管理ルールの整備が不可欠です。委託契約や業務契約の中に、セキュリティ要件や責任範囲を明確に定めることが重要となります。

定期的なアカウント棚卸しやアクセス権限の見直しを行い、不要な権限や未使用アカウントを放置しない運用体制を構築する必要があります。

また、インシデント発生時の連携フローや対応体制を事前に定めておくことも重要です。どのタイミングで誰に連絡し、どのように情報共有を行うのかを明確にしておくことで、被害拡大を防ぐことができます。

組織的対策(意識・体制づくり)

サプライチェーン攻撃対策は、IT部門だけの問題ではありません。経営層・管理職・現場担当者すべてがリスクを正しく理解し、組織全体で取り組む必要があります。

外部との接続や業務委託を進める際には、利便性やコストだけでなく、セキュリティリスクの観点も含めた判断が求められます。業務効率化とリスク管理のバランスを取る経営判断が重要となります。

また、社内教育や啓発活動を通じて、サプライチェーンリスクへの意識を組織全体に浸透させることも重要です。現場レベルでの気づきや報告体制が、被害の早期発見につながるケースも少なくありません。

 

参考記事:セキュリティ対策の重要性と企業が実施すべき施策を徹底解説

まとめ

サプライチェーン攻撃は、企業間の「つながり」を悪用する構造的な脅威であり、自社単体の対策だけでは防ぎきれません。企業規模を問わず、自社が被害者になるだけでなく、他社への攻撃の「踏み台」になるリスクも孕んでいます。

今後の対策においては、「どことつながり、誰に権限を与えているか」を正確に把握し、技術・運用・組織の三位一体で継続的に管理する体制が不可欠です。まずは自社の外部連携を含めた全体構造を可視化し、リスクを最小化する取り組みから始めましょう。

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