適切なIT資産管理は、セキュリティリスクの抑制や不正利用の防止に欠かせません。
ただし、効率的に管理できないと作業負担が大きくなるほか、正確な情報が集められなくなるため、注意が必要です。
この記事では、IT資産管理の概要と、目的、必要性について解説しています。IT資産管理に活用できるツールと選ぶ際のポイントもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
目次
IT資産管理とは、企業や団体が保有するIT関連の資産状況を把握し、適正な状態に維持・管理することです。
IT資産に該当するものとしては、ハードウェア、記憶媒体をはじめとする周辺機器、ソフトウェアなどが挙げられます。
これらは、オフィスなどの不動産や、それ以外の設備と同様に、企業にとっての重要な資産であるため、適切に管理することが重要です。
IT資産管理では、IT資産から得られる情報、例えば自社におけるハードウェアの利用状況、通信環境、ソフトウェアのユーザー数などを管理し、セキュリティやコンプライアンスの強化を図ります。
IT資産管理の目的や必要性としては、以下のようなものが挙げられます。
それぞれ見ていきましょう。
IT資産には、顧客や従業員の個人情報、商品・サービスの開発データなど、さまざまな機密情報が含まれています。
そのため、適切にIT資産を管理していなければ、サイバー攻撃やマルウェア感染によるリスクを高めかねません。
これらの脅威を早期に検知・発見できない環境では、重大なセキュリティトラブルに発展する恐れがあるでしょう。
IT資産管理では、端末の脆弱性対策やアプリケーションのバージョン管理などを業務の一環として行います。
これにより、外部からの攻撃を防いだり、脅威を未然に検知したりと、セキュリティレベルの向上につながります。
IT資産を活用する際は、社内ルールの周知徹底が不可欠です。社内にルールが浸透していなければ、端末の不正利用やライセンス違反などのトラブルに発展する可能性があります。
そのため、企業は社内のIT機器がルールに則って使用されているか、不審な痕跡がないかなどを監視する仕組みを作らなければなりません。
IT資産を適切に管理していれば、社内ルールが浸透した環境下でコンプライアンスを強化できるでしょう。
たとえば、特定の外部記憶媒体の接続を制御すると、情報持ち出しに関する抑止効果が働くといったことが挙げられます。
そのほか、端末ごとにインストールされているソフトウェアライセンスを一元管理することで、ライセンスに対する認識違いや不注意の発見につながるでしょう。
適切なIT資産管理は、コストの最適化や効率的なIT資産の運用へとつながります。
たとえば、ソフトウェアの稼働状況を正確に把握することで、既存ライセンスの費用対効果や、別のライセンスに切り替えた際の費用削減効果などが割り出せるでしょう。
また、OSごとの端末数を把握していれば、サポート期間終了後のOS更新における予算立案にも応用が可能になります。
このように、IT資産の状況を細かく知っておくことは、経費の無駄遣いを防ぐためにも有効です。
従来のIT資産管理は、Excelをはじめとする表計算ソフトを用いた管理手法が主流でした。
しかし、このような表計算ソフトによるIT資産管理では、情報が更新されない、正確性に欠けるといった問題が起こりやすくなります。
これらは多くの場合、人員不足による更新頻度の低下や、ヒューマンエラーによる入力ミスなどが原因です。
このような事態を放置すると、管理業務の煩雑化やミスの多発により、さらに情報の正確性が失われていくでしょう。
その結果、セキュリティ対策やコンプライアンス強化といった、IT資産管理から得られる恩恵が薄れかねません。
管理すべきIT資産の種類や数が少なければ表計算ソフトでも管理できますが、上記のような課題が発生している場合は、専用のツールに切り替えるのがおすすめです。
前述のようなIT資産管理の課題をカバーするためには、専用ツールの活用が有効です。
「管理にリソースが割けないため自動化したい」「今までのデータを引き継ぎたい」など、目的に応じて選び分けるとよいでしょう。
また、一概にIT資産管理ツールといっても、次のように複数の種類に分けられます。
それぞれの特徴を理解して活用しましょう。
統合運用管理ツールは、各種デバイスやサーバーなど、社内に散在するIT資産全般を集中的に管理して、運用効率を高めるためのツールです。
ほかのツールに比べて機能が豊富で、統合的にIT資産を管理できるのが特徴です。
たとえば、後述するインベントリ収集ツールの機能に加え、サーバーのリソース監視や死活監視などの監視機能が充実しています。
ただし、管理すべきIT資産の数が少ない小規模な企業には費用対効果が見合わない可能性が高く、グローバルに展開する大規模環境で用いられるのが一般的です。
また、綿密な運用プロセスを設計する必要があるため、専門的な運用ノウハウが求められます。
多くの機能があっても、使いこなせなければ宝の持ち腐れになってしまうため、自社の要件に合わない場合はほかのツールを検討しましょう。
今まで人の手で行ってきたExcel台帳による棚卸作業を、自動で情報収集することにより効率的な管理を実現するツールです。
インベントリ(ハードウェアやソフトウェアなどの構成情報)には、端末名やOS、ネットワーク情報、ドライブ情報といった数多くの情報が含まれています。
そのため、手作業で膨大な量の情報を確認し、収集していくのは困難を極めるでしょう。
また、この段階の作業でミスがあれば、正しい情報を集めることができません。
インベントリ収集ツールを使って作業を自動化すれば、効率良く情報をまとめてスピーディーな台帳化が可能になります。
従来、Excelで管理していたIT資産台帳を、システムと照らし合わせるためのツールです。
誰もがスムーズにアクセスできるシステムに台帳を集約することで、「ヒューマンエラーが起きやすい」「共同編集が難しい」といったExcel管理ならではの課題解消につながるでしょう。
本来あるべき資産と、現状の資産状況をリアルタイムに見比べられるのが特徴で、それぞれの差分を比較して問題点を明確にできます。
ただし、管理すべき情報を効率的に収集する機能としては、上述したインベントリ収集ツールや総合運用管理ツールに比べ、不十分であるものが多いのが残念な点です。
そのため、台帳管理ツール単体ではなく、ほかのツールを組み合わせながら活用するのが望ましいでしょう。
IT資産管理ツールを選ぶ際は、以下の3つのポイントが重要になります。
一つずつ見ていきましょう。
IT資産管理ツールの導入形態は、大きく「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類に分けられます。
オンプレミス版は、自社に用意する管理サーバーが高スペックであれば大規模環境においても管理が可能です。また、かゆい所に手が届くような細かい機能が豊富に実装されており、ログの保存期間やデータ収集の頻度などを自由に設定できるのも利点です。
一方のクラウド版は、オンプレミス版と比べると実装機能は劣りますが、サーバーの構築が不要でスピーディーに導入できるといった特徴があります。インターネットを介して、ほかの拠点のIT資産を管理したり、PCに限らずスマートフォンやタブレット端末も統合的に管理したりすることが可能です。
IT資産管理ツールは、ツールによって搭載されている機能が異なるため、あらかじめ課題と目的を明確にし、要件に沿って各種機能の必要性を洗い出すことが大切です。
さまざまな機能をまとめて提供するオールインワン型なのか、必要な機能のみをオプション選択できる形態なのかも把握しておきましょう。
ツールは原則として多機能であるほど、高額になります。オールインワンで提供される機能がすべて必要であれば問題ありませんが、目的達成のために必要な機能が少ない場合は、割高になる可能性があります。
予算に合わせて機能を選択したいものの、情シス担当者が不在で判断できないといった場合は、導入の相談ができるサービスを選ぶとよいでしょう。
ツールとしての操作性や使い勝手が悪いと、実際に操作する現場の不満が溜まり、IT資産管理ツールの定着が進まない可能性があります。
とくにIT資産管理ツールは利用頻度の高いシステムだからこそ、現場担当者を巻き込んで操作性を入念にチェックすることが大切です。
慣れるまでに時間がかかると、今までのやり方に戻そうといった意見が出てくるかもしれません。
IT資産管理ツールのなかにはトライアルやデモに対応している製品もあり、期間中であれば無償でツールの操作感や機能性を検証できます。
ツールの導入費を無駄にしないよう、事前にしっかりチェックしておきましょう。
自社のIT資産を適切に管理することは、セキュリティレベルの向上やコンプライアンス強化のほか、コストの最適化にも寄与します。
人の手で行う管理ではヒューマンエラーによる抜け漏れやミスが発生しやすくなるため、専用ツールの活用がおすすめです。
ただし、自社の要件に合わないツールでは費用対効果が低くなるほか、かえって作業効率を下げてしまいかねません。
自社の課題を明らかにし、要件に合ったツールを選ぶことが大切です。
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